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日本の伝統技法を今に伝えるキプリスのこだわり
更新日時:2016/09/02
ヨーロッパの財布に「切り目」という手法が多く用いられるのに対し、キプリスの革小物は「へり返し」がベースの日本伝統技術「袋もの仕立て」を駆使して作られています。これは江戸時代、特に発達した技術で、巾着や紙入れなど和装小物の製法を由来とするものです。
この日本古来の「袋もの仕立て」には、財布の角を美しく仕上げる「菊寄せ」をはじめ様々な技法が用いられるため、熟練した技術が必要となります。これらの繊細な技法で、キプリスの革小物は装飾性と機能美を追求しています。また、そのぶん通常の革小物より工程数が多く、全行程中のハンドメイド比率が70〜90%以上という点も特徴です。
繊細な「袋もの仕立て」を実現する高度な職人技
同様の袋もの仕立ての財布でも、キプリス製品と海外製品を見比べると、仕上がりの美しさの違いは一目瞭然です。例えば財布のコーナー部分。キプリスの革小物は専用のヘラで放射状に細かなひだを重ね、まるで菊の花びらのように美しく見せる「菊寄せ」という高度な職人技術が用いられています。
左が「菊寄せ」を駆使したキプリスの革小物。右が海外の製品。細かい刻みは入れず、切り込んだへりを返しただけのシンプルな処理が多い。
今回は、キプリスの革小物に使われている製造技法の一部を紹介します。
ヘリ漉き
袋もの仕立ては、革のヘリを折り返す「へり返し」の技法がベースとなります。そのため、革のフチ部分を薄く漉く「ヘリ漉き」と呼ばれる工程を行います。
ヘリ漉きには革漉き機を使用します。漉く幅と厚さを調整し、刃とローラーの間に革を挟んで、滑らせるように左から右へとスライドして革の裏面を漉いていきます。回転するローラーと同じスピードで革を流すのがコツですが、これが簡単に見えて意外と難しく、タイミングがずれると革は途端に破れてしまいます。
革漉きは高い技術が必要な工程で、革を漉く作業を専門に行う職人もいるほど。そういった専門の漉き職人には、新聞紙を二枚に漉く技術者もいるそうです。
革の厚みの調整は、革の種類や特性、作る製品のイメージによって異なります。シンプルで端整な財布は革を薄めにし、ハードなイメージの革小物は厚めに仕上げます。一般的に0.25〜0.3㎜で、製品にボリューム感を持たせたい場合は0.3〜0.35㎜くらいに調整して革を漉きます。
コーナー手漉き
「ヘリ漉き」をした革の角を、手作業でさらに薄く漉いていくのが「コーナー手漉き」です。これは「菊寄せ」などを美しく仕上げるために行います。
専用の革包丁を使い、革の表面をなでるように滑らせて包丁を入れていきます。包丁を立てると革が切れてしまい、逆に包丁を寝かせすぎるとまったく漉くことができません。その力加減は職人の経験によるもの。絶妙な包丁さばきが必要となる難しい工程です。
先端にいくほど薄くなるように漉くので、手前は0.2㎜くらい、先端はなんと0.1㎜という薄さに。まさに職人技といえる繊細な手仕事が要求されます。
ゲージは0.01㎜単位。目盛りが10を指しているので0.1㎜です。
「つり木」を使用
「つり木」と呼ばれる木型を使い、財布の折り目を形成します。つり木に革をぴったりと合わせて、ギュッギュッと手で押しつけて馴染ませることで、革にカーブをつけていきます。
これは紳士財布だけに用いられる工程で、財布をより美しくすっきり仕上げるために行います。フリーハンドで折り目をつけると、形が不揃いになったり折り目が斜めに曲がってしまったりするため、美しいカーブを作ることができません。
つり木は50年近く使っている年代物で、このつり木の幅が財布の幅になります。靴でいうところのラスト(木型)のようなもの。単純な作業ですが、とても重要な工程だといえます。
ストックしている革は最高の状態で保管
伝統技法のほかにキプリスがこだわっているのが、革そのもののクオリティです。
革を保管しているキプリスの倉庫内は、常に20〜23度をキープして革の劣化を防いでいます。また、カーフなどの柔らかい革は広げて保存しています。ソフトな革はたたんで保管しておくと、少しずつ伸びてしまうため、いざ使うときに裁断すると縮んでしまうことがあるのです。
製品を作る革工房で、このように温度や湿度を徹底管理し、革を広げて保管しているところはなかなかありません。これもすべて、ユーザーに最高の革小物を届けるためのキプリスのこだわりです。
もちろん検品も徹底的に行います。財布は面が小さいので傷が目立つため、バッグなど大きな製品よりシビアに検品が行われます。わずかな傷も見逃さないために、革は必ず明るいところで広げて、手で触って傷や凹凸を見極めます。
最高の保存状態にある革を使い、高度な職人技術で仕立てるキプリスの革小物。こだわりが詰まった製品たちを、あなたのパートナーに加えてみてはいかがでしょうか?
Photo Yoshinori Eto
Text Masahiro Tsuda
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