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伝統技術とモダンデザインが融合したキプリスの新技法「角落とし」とは?
更新日時:2017/12/13
キプリスの革小物に、新たな技法「角落とし」を用いた新作が登場しました。今までの革小物とは一線を画す、シャープな印象と遊び心を持つデザインが魅力です。
今回は、この「角落とし」が生まれた経緯や、どのような工程で作られるのかなど、その革新性について紹介します。
日本の伝統技法「袋もの仕立て」
キプリスの革小物の多くには、「袋もの仕立て」と呼ばれる、江戸に栄えた和装小物の作りに由来する伝統技法が用いられています。そもそも「袋もの仕立て」とは、江戸時代に財布と物入れを兼ねてさまざまな袋物が作られ、それらを作る技法が源流となっています。
海外製品と形状は似ているものの作りの由来が違うため、工程や接着に使用するノリなども異なります。欧米製品で多く使われるゴムノリに対して日本の「袋もの仕立て」の小物は水性のりを多く使います。これは昔、米粒などをすり潰して使用したでんぷんノリから由来します。財布などのフチ部分を折り返した作り自体は海外製品でもありますが、細部の処理を繊細かつ美しく仕上げる「ヘリ返し」や「菊寄せ」の技術は日本特有の技法です。これに対して、フチの部分を折り返さず、裁断した革どうしを縫い合わせ、断面(コバ)に着色や磨きの処理を行ない仕上げる「切り目」という技法があり、キプリスの革小物にも採用しているモデルがあります。
どちらが優れているというわけではありませんが、繊細な「袋もの仕立て」は「切り目」よりもフォーマルな印象を与えるため、ビジネスシーンで用いる革小物に適しています。フチ部分が丸みを帯びているので、温かみのある雰囲気を醸し出すと同時に、コバがひび割れることもなく、長く使用できるというメリットもあります。
フチ部分(へり)を折り返して作る、日本の伝統技術「袋もの仕立て」とコーナー部分をまるで菊の花びらのようにヘラで丁寧に刻みを入れる「菊寄せ」
海外製品のコーナー部分。細かい刻みは入れず、切り込みを入れるシンプルな処理が多い。
革どうしを縫い合わせ、断面を磨き上げる「切り目」
江戸切子の伝統紋様がモチーフ
そんな「袋もの仕立て」を用いながら、「切り目」のようなシャープさを表現したのが、今季から登場した新技法「角落とし」です。
その名の通り、角を落としたシルエットが特徴で、これは江戸切子に用いられる代表的な伝統紋様「八角籠目紋」からインスピレーションを得て生まれました。この籠目には魔除けの効果があると言われ、「幸せを籠む、幸せを逃さない」という意味を持っています。
この紋様をモチーフにデザインされた「角落とし」は、「袋もの仕立て」によるメリットを備えながら、シャープな印象と遊び心を表現した新技法なのです。
高度な職人技術による仕立て
「角落とし」は、ただ財布の角を落とすだけでは作ることができません。そこには高度な職人技術が必要となります。
まず、財布のフチ部分(ヘリ)を折り返す前提で革の重なる厚みを考慮し、計算して角を落とした型を作ります。型を作る際は若干大きめに、少しゆとりを持って作り、この型を用いて革を裁断して各パーツを仕立てていきます。
そしてパーツどうしを接合する直前に、「ヘリ棒(定規のような棒)」と呼ばれる道具を使い、余分な革を革包丁で切り落とし、ヘリを折り返す幅を均一に調整する「化粧裁ち」を行ないます。この最終段階の工程がとても重要で、美しい角を実現するためには高い技術力が要求されるのです。
このような職人技によって完成した、新しい角の処理技法「角落とし」。日本の伝統技術である「袋もの仕立て」を駆使し、従来にはない優れたデザイン性と、角が当たっても折れにくいという機能性を両立しています。伝統技術とモダンデザインが融合した「角落とし」の新作に、ぜひ注目してみてください。
Trilogy(トリロジー)
「Trilogy(トリロジー)」は、「角落とし」の技法を用いたシリーズとして人気で、多くの方にご利用いただいています。
Photo Yoshinori Eto
Text Masahiro Tsuda
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