menu

CYPRIS MAG
CYPRISの公式ウェブマガジン

「AERA STYLE MAGAZINE×CYPRIS」特別号が発刊されました

更新日時:2016/12/01

朝日新聞出版が季刊発行しているファッション情報誌「AERA STYLE MAGAZINE Vol.33」にキプリスの革小物が紹介されました。

また、「AERA STYLE MAGAZINE × CYPRIS」の特別号も合わせて発刊されていますので、是非ご覧頂ければと思います。

以下は、アエラスタイルマガジンvol.33 からの転載記事となります。

 

「いい製品とは、一見にして違和感がないものである」

キプリスの工房を統括するトップマイスターの結 進(ゆい・すすむ)氏は、静かにそう語った。明解にして難解。まるで禅問答にも聞こえる。

ブランド名の「キプリス」とは、中南米の熱帯雨林に生息する、世界で最も美しいとされる蝶類。ブルーに光り輝くモルフォ蝶のなかでも、ひと際、美しいキプリス・モルフォ蝶は、自然界に孤高を保ち、美の頂点を極める存在だ。

その輝かしい名称を掲げたキプリスが誕生したのは1995年のこと。当時、ファクトリーブランドの皮小物といえばインポートが大半で、国内産のブランドはごくわずかしかない時代。日本には江戸時代から継承されたきた“袋物”技法があるが、そのテクニックを前面にうたう、日本を代表するブランドが存在しなかった。

日本にも誇れる技術がある。

和装文化によって育まれた袋物技法は、世界に出して恥ずかしくない。むしろ同じ技法を競うならば、その技術は世界一だ‥‥‥。キプリス誕生の背景には、職人たちのこのような思いがあったのだろう。

ヨーロッパの革小物は、馬具作りから発展しているが、工作機械が発達して以降、日本勢もヨーロッパの製法に倣ったのは確かだ。しかし、日本には和装の布小物を製作する、細やかな手仕事がベースにある。紙幣、硬貨、名刺など、収めるものが同じならデザインが似通うのは当然だろうが、両者はルーツそのものが異なっている。

それゆえに”ヘリ返し”ひとつとっても、日本とはヨーロッパでは作り方が違う。ヨーロッパではゴム糊を使うことが多いが、日本の場合は、水性糊。米粒を潰したでんぷん糊を使う慣習から、現在も水性糊を大半に用いている。

また”菊寄せ”など、そもそもヨーロッパには存在しない製法もある。しかもこの”菊寄せ”が美しく刻まれているならば、すなわち腕の立つ職人が手がけた証拠とされている。辺と辺が交差する四隅には”漉き””ヘリ返し”など、さまざまな職人技が駆使されるものだからだ。

日本には、革小物の製作に関する技術認定制度があるが、1級試験に合格した職人が全国で12名。

そのうちの7名がキプリスの工房に在籍する。この事実からして、工房の持つ技術力の高さがうかがえる。そして結氏率いる製造部門の中枢では、多数の若手職人が研鑚を積んでいる。彼らこそが、未来の日本の革小物産業を支える人材だ。技術の継承があって、「キプリス」というブランドがいつまでも輝きつづけられるのだ。

 

それぞれの専門領域において、プロフェッショナルがいる。

海外ブランドに負けない素材の発掘とともに、素材の性質を見極めて、デザインチームがどうデザインするか、職人がどう作るかを決めている。それぞれのポジションの目利きがいて、「キプリス」というブランドの価値観が生まれている。

さて冒頭に記述した結氏のコメントであるが、それを確かめるには具体的に異なる製品を見比べてみるしかない。そうすれば相対的に優れているものが見えてくる。一見、美しい長方形に見えていたものが、真っすぐに思えた縫い目が実は曲がっていたり。職人の仕事とはそういうレベルのものである。そのわずかなズレを、我々は”違和感”として感じるのだろう。逆に言うなら、違和感がなければ作りが正確なのである。

気づかれにくい箇所も、手を抜かない。それが日本のモノづくりである。職人とはモノを仕立てると同時に、美意識を創造する。凛とした空気感とは、その美意識の表れだ。「キプリス」には、職人技が詰まっている。

 

 

img161201_0102

1 財布ひとつを作るのに使用するパーツは数百以上。おびただしい作業を積み重ねて出来上がる。
2 コーナーに刻みを入れる「菊寄せ」。革をギリギリまで薄く漉いているので、厚みが出ない。
3 完成した9つの刻んだ「菊寄せ」。これが日本の誇るべき職人ワザだ。

 

img161201_0103

4 革を薄く漉く技術により、アタリが出にくい薄作りの札入れができる。その技術研鑚が、ついに新聞紙を2枚にするほどに至った。
5 ステッチのラインが美しいのは当然の事。それはミシンを掛ける前の仕立て工程のバランスがよい証でもある。
6 工房は流れ作業ではなく、一人の職人が全行程を請け負う。

 

img161201_0104

7 工房を代表するトップマイスター結 進氏。職人とは誰に技術とは誰に技術を習ったかによって、その後の道がおのずと決まるが、彼に学んだ職人は幸せである。
8 都内某所にあるキプリスの工房。若手職人の存在が際立つが、技術の継承を背景にして次世代にわたりブランドを育もうとする姿勢が、ここからも感じられる。