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【INTERVIEW】「求められるものを的確に」「満足したら終わり」-キプリスの職人集団を束ねる結進氏インタビュー

更新日時:2016/09/05

結先生インタビュー

日本の伝統技法「袋もの仕立て」を駆使し、装飾性と機能美を併せ持つキプリスの革小物。道具としての使いやすさ、ファッションとしての美を追求し、多様なライフスタイルに寄り添う商品を生み出すためには、経験豊富な熟練職人たちの存在が欠かせません。キプリスのコレクションは、モノづくりの頂点を目指す職人の美意識と確かな技術、そして手間と時間を惜しまないクラフトマンシップによって、その完成度を高めています。

キプリス製品を手がける工房には、革小物の技術認定試験において一級試験を合格した職人が数多くいます。全国に12人しかいない革小物の一級職人のうち、なんと7人もの職人がキプリスの工房にいるのです。このような快挙が可能なのも、若い技術者を育てるという意識があるからにほかなりません。

そんなキプリスの工房を統括しているのが、この道一筋48年の結進(ゆい すすむ)先生です。結先生は革小物の技術認定試験第一回の一級合格者で、日本メンズファッション協会の技術マイスターも受賞されています。この技術マイスターの資格は、ただ自分に技術があるだけでなく、次世代に技術を伝えているかどうかも重要な審査基準となるもの。そのため業界内外から高い評価を得ているベテラン職人です。

インタビュー

 

「巧く早く綺麗に」をモットーに若手を育成

結先生インタビュー

 

――キプリス製品を作るうえで心がけていることは?

社訓のようなものですが、みんなに言っている言葉のひとつが「巧く早く綺麗に」。職人は作家とは違うので、自分でイメージを作るのではなく、求められていることが的確にできるかどうかが重要なんです。

キプリスの工房は技術者を養成しようとしているので、分業制ですが担当する工程はローテーションでまわしています。いずれは一人でひとつの製品を、イチから最後まで作ることができるように。

このように職人を育てることはとても大事なこと。特にハンドメイドは、作り手の感性や技量が製品にストレートに現れます。今は会社で作っていますが、例えば独立してもやっていけるのか、それくらいまで高い技術を身につけることが必要だと思っています。

 

――先生は長い経験からその技術を身につけられた

技術に対する自負はあります。しかし自分の技術が一番だなんて思っていません。満足していたら当然技術は伸びないし、もっと巧くなりたいという気持ちはいつまでも持っていないと。ここまででOKと満足したらそこで終わりですから。職人の世界に頂上はありませんよ。

あと人間が成長するためには、様々な“違い”がわからないとダメですね。商品を見たときに、巧い・下手がわかるのと、自分の技術レベルがどのあたりにあるのかがわからないと成長はできません。

新製品のプロトタイプは一度しか作らない

結先生インタビュー

 

――商品をデザインされることもあるのですか?

私は職人なので商品をデザインするということはありません。商品担当から企画が上がってきて、それを実際に製品にしていきます。どういった技法を使えば作れるのか、この部分の仕様はこうしたほうがいんじゃないか、といったことなどを企画の段階で話し合います。

特に生産数を確保できるか、実際に機能的に使えるかを考えて製品化しています。見本は私が作れたとしても、いざ生産するときに作れる人がいないと商品としては成り立ちません。これはいつも課題で、最初は「ハニーセル・カードポケット」もこのような問題がありました。他の製品にはない画期的な機能は、やっぱり作る工程としては難しいので。

 

――では試行錯誤を重ねて製品は生まれるのですね

いえ、試作品は一度しか作りません。一度作ってみて、そこからの作り直しはしないんです。同じ工程も何度か繰り返すということはせず、一回で終わらせます。自分の中では一回目から完璧なものを作ろうという気持ちで、いつも新作に取り組んでいます。

図面から型紙をおこす段階では、多分これで大丈夫だろうと思っていますね。考えるのはその前の段階で、図面を見て頭の中で商品を描きます。頭の中で完成していないと商品は作れませんから。でもこれは、実はそれほどたいしたことではないんですよ。

また、形だけではなく、商品企画の担当者がイメージしている雰囲気も考慮して作っています。すっきりしているのかふっくらしているのか、そのイメージもひとつの形。どういうイメージなのかをしっかり聞いて、それに合わせて革の厚さや芯材の入れ方などを考えます。

「菊寄せ」を見れば革小物の良し悪しがわかる

――キプリス製品のどの部分に注目してほしいですか?

強いて挙げるなら「菊寄せ」を見てほしいですね。この“寄せ”部分を見比べると、他社製品との違いがわかると思います。ここの仕上がりが商品全体のクオリティを測る判断材料にもなり、寄せの美しさで職人の技量がわかるんです。

あまり目立たない箇所ですが、こういったところに手間を惜しまず、美意識を持つ感覚こそが職人の誇りであり、キプリスのこだわりなのです。

菊寄せ

職人の高度な技術によって生まれるキプリス製品の「菊寄せ」。この美しい角の処理に、職人の美意識とキプリスのこだわりが現れています。

 

Photo  Yoshinori Eto
Text  Masahiro Tsuda